戻るのか、残るのか。間もなく発生10年になる東京電力福島第一原発事故で故郷を追われた避難者は、複雑な思いを胸にそれぞれの道を進もうとしている。
福島県から県外への避難者 復興庁と福島県によると、ピークは2012年3月時点で約6万3千人に上り、今年10月時点で約2万9千人いる。避難先は隣県の宮城と茨城、首都圏が中心で、全都道府県に広がっている。
「事故前に思い描いていた人生と違う人生になった。それが悔しくて」
大阪市淀川区に住む酒井サヨ子さん(77)は事故直後の2011年3月、福島第一原発の20キロ圏内にある福島県楢葉町から、兄を頼って避難してきた。
楢葉町は亡くなった元夫の故郷で、結婚してから40年間暮らしていた。週3日、老人ホームで洗濯の仕事をし、休みの日には農家を手伝った。山や田のあぜで山菜を摘み、借りた畑で野菜を育ててもいた。
「米や野菜はもらったり、作ったりしたもので十分足りた。買うのは肉や魚、乳製品くらい」
そんな暮らしが、事故で一変した。
自宅に津波の被害はなく、避難…
2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル